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  • 梶原

【港区コミュニティを科学する③-2】孟子のことば


孟子のことば

孟子曰く 天の時は地の利に如(し) かず 地の利は人の和に如(し) かず

現代語訳:天がもたらす機運ですら、恵まれた地勢の有意性には及ばない。

     その地勢の有意性を以ってしても、人心の団結には遠く及ばない。

「天の時」(機運)に乗り、「地の利」(資源)を読み、「人の和」(団結)があれば、何事も達成することが叶うでしょう。

「義とは、人が人としてあることの美しさよ」と諭し、その信条を生涯貫いた越後の武将上杉謙信は、孟子のこの言葉について次のように述べています。

※『義』とは、その人本来の道。

天が与えし絶好の機会を得て、地勢の有意性にも恵まれ、領民や家臣団がひとつにまとまっている。この三条件を整え掌中に収めた大将など、日本や中国の歴史上、神代の時代にさかのぼっても聞いたことがない。もっとも、このような大将がいれば、戦など起こる訳もなく、敵対する者も出てこないであろう。

繰り返しますが「天の時、地の利、人の和」この三条件を満たせば、すべてのことは成るのです。

これを「自律する地活」にあてはめるとどうでしょう。

『天の時』とは、地域課題を柔軟な発想で解決できる「地域活動協議会」という仕組みが、

        突然降って湧いた日。

『地の利』とは、地活の名のもとに、地域の各種団体が連携する強みを体感してしまったこと。

『人の和』とは、地域課題に関わるすべての人が心をひとつに協力する。

        そこには信頼が芽生え、共に地域のためにという連帯感が生じた。

地域活動においては、まず大義(大いに正しい道理)がなくてはなりません。住民が地域のためにボランティアで活動しているのです。なぜその事業をするのか、誰のために。

やりがいや生きがいなどを見出し、正しく道理に適った者どうしが協力して、一致団結ベクトルを合わすことができれば、それに勝る強さはありません。

そしてそこには「高次な達成感」が生じ、大きな地域の原動力となります。

ここでは、地活のこれまでの活動と現在進行中の事業のなかから、「天の時、地の利、人の和」を映す港区の5つの事例をピックアップしてご紹介します。

お部屋探しのパートナー「住みサポ」

NPO法人南市岡地域活動協議会の理事長は、地元で不動産業を営んで30年になります。ある日、大阪市都市整備局から「居住支援法人」について地域の方のご意見を伺いたいと港区役所に連絡がありました。結果理事長がインタビューを受けられることになり、その後まちセンに「これ、やろう!」と電話がありました。

居住支援法人とは?

平成29年10月25日に施行され、高齢者、低所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など、民間賃貸住宅や空き家を活用した「新たな住宅セーフティネット制度」が本格的に始まったことにあわせて、国土交通省が活動に要する費用の一部を補助する事業。

国土交通省「居住支援法人活動支援事業の概要」より

国土交通省の「重層的住宅セーフティネット構築支援補助事業」に申請するため、急ピッチで書類を作成し、平成30年2月にNPO法人南市岡地域活動協議会・居住支援事業部「住みサポ」がスタートしました。

「不動産店舗で相手にしてくれない、物件を紹介してくれない」など、賃貸物件への入居にお困りの方へ、安心して入居できる部屋を一緒に探し、契約手続きも立ち会います。

「住みサポ」事業は、見守りコーディネーターやネットワーク委員などの地域に根差した人材を軸に、区役所や社会福祉協議会(以下、社協)など各関係機関とも連携しています。

入居後も地域行事へ案内するなど、定期的に訪問し、福祉や子育ての専門家と相談しながら生活をサポートします。

今年3月には、大阪市福祉局の指導を得て、障がい者グループホーム「グリーンハート南市岡」を開設しました。すべての人が地域で自立し、その人の意思に基づいた暮らしが安心してできること。

これが、南市岡地活がめざす施設であり、地域づくりです。

障がい者、高齢者、子育て世帯、低所得者、被災者、外国人世帯など、立場の弱い方々を社会の構成員として受け入れ、サポートしてこそ、本当の「地域」になると理事長は考えられています。

パンフレット表
パンフレット裏

曽我の布石

大阪市が推進する「市政改革プラン2.0-新たな価値を生み出す改革-」は、平成28年度から平成31年度までを取組期間とし、令和2年度に新たに策定されます。地活の支援を目的に設立された中間支援組織(まちセン)は恒久的なものではありません。平成25年度に地活が発足して、今年で7年目となります。今後の中間支援組織の位置づけについて、現在、市政会議で議論されています。

市がどのようなベクトルを打ち出すか注視されるところですが、港区まちセンは「中間支援組織から脱却し、地活のパートナーになる」ことを以前よりめざしてきました。NPO法人南市岡地域活動協議会の「住みサポ」等の新規事業においては、実質的な事務局機能をまちセンが担い、国土交通省や大阪府市の専門部局等と連携を図ってきました。

各地活の地域課題や方向性に合わせて、まちセンの専門性を高めながら、地域の「これ、やろう!」に応えていく。それが、今後の中間支援組織に求められる資質だと思います。

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

 

【港区コミュニティを科学する③】2 孟子のことば

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