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  • 梶原

【港区コミュニティを科学する③-3】人の和


人の和

みんなの食堂「田中食堂」

多くの地域が、高齢者食事サービスという食事会を月1回ほど地域の会館で開いています。

田中地域も同じく、地域の70才以上の独居の方を対象に、見守りを兼ね手作りの食事でもてなしてきました。しかし、参加者は固定され、食事を提供するスタッフも高齢化が進み、食事サービス事業を見直す必要が出てきました。

参加者の裾野を広げたい、少しでも子どもの孤食を減らしたい、子どもから高齢者まで地域の誰もが集える場にしたい。食事サービスを一旦解散し、平成29年4月、若手スタッフも含め新たな体制で「田中食堂」が始まりました。

食事作りでは、年配のベテラン勢はあえて手を出さず、若い人に現場を任せました。しかし、200人に上るカレーを作るのは初めてです。50人分を作っていた食事サービスのスタッフに教えを請いながら、若手とベテランが一緒に台所に立ちます。

今では、30名以上のスタッフ登録があり、都合がつく人が無理なく参加しています。

田中食堂の開店日、田中会館の2階では「すまいるひろば」も開かれています。

 

すまいるひろば

赤ちゃんからお年寄りまで誰もがゆっくり過ごせる場所です。将棋・オセロ・トランプ・折り紙・ぬりえ・ブロック等…で遊んでもよし。宿題をしてもよし。ママ友とおしゃべりもよし。何もせず、ぼんやりするもよし。ボランティアが会場内の安全を見守っています。気軽にお出でください。

田中地域活動協議会「たなかだより」より

 

親子で来て、カレーを食べて、2階で遊んで、ママ友と合流して、近くの公園へ。

1階は段差もなく、靴を脱がずに入れるので、高齢者にも快適です。食事の後は、コーヒーを飲みながら話に花が咲きます。老若男女問わず、地域みんなの憩いの場になっています。

日時:毎月第1土曜日 田中食堂11:30~14:00

           すまいるひろば10:00~14:00(小学生向けの勉強"まなびば"~12:00)

場所:田中会館(老人憩の家)

曽我の布石

食事サービス事業の発展的解散に至るには、地活の公益性(特定の人が利する活動ではなく、できるだけ多くの地域の方のために)を共有すると同時に、地活のしくみ(一括補助金により、地域課題に応じた予算化をすべき)をあらためて認識してもらう必要がありました。主要メンバーを集め、説明会を開きました。

「すまいるひろば」運営には、大阪市ボランティア活動振興基金の助成金「区の実情に応じた助成事業」を活用しました。日頃から区と情報共有し、民間助成金のサイトなどもチェックし、各地域とマッチングできないか考えています。

田中食堂のように上手く地域課題(担い手の負担軽減と新たな発掘、世代間交流、居場所づくり)を克服した地活ならではの事例については、大阪市市民局へ積極的にアピールしました。市民局から地活協フォーラムを通して大阪市24区へ情報共有され、田中食堂には視察が相次いでいます。

切磋琢磨しながら地域が活性化されるには、良い事例をでき得る限り共有すること。そこに課題解決のヒントがあるかも知れない。各地域の実情に応じてそれを膨らませるとよい。そのためにも私は「港区モデル」を創り続けます。

桜通りde桜まつり

港区磯路に800mに及ぶ桜並木があります。50年ほど前、大阪万博を前に緑化の機運が高まり、桜は街路樹に適さないと市に反対されながら、住民の自主管理を条件に桜が植えられました。

町会有志で維持管理してきましたが、会員の減少や高齢化が進み、老木となった桜の世話が行き届かなくなってきました。

磯路地域活動協議会が発足し、この課題を地域で話し合い、まずは広く桜並木とこの現状を知ってもらうため、平成27年、「桜通りde桜まつり」を開催することにしました。

港区11地活に呼びかけたところ、7地活が食べ物やおもちゃのブースを出店することになりました。それまで、港区には他地域に干渉しては失礼という不文律がありました。それを突破したことにより、地域間交流も進んでいます。

曽我の布石

桜並木の課題を知った当初、まずは対策を考える場が必要だと思い、維持管理する町会有志(桂音会)、磯路地域の主要メンバーとまちセンが集い、6回に亘る「桜サミット」会議を開きました。

その内容は常に区役所と共有し、まず磯路桜通り「桜並木」の置かれた現状を、広く住民に認知していただく祭りを開くことに決まり、クラウドファンディングを活用した広報なども提案し、その実施も担いました。行政や警察とも調整しながら、地活と歩行者天国の手続きを取りました。

来場者は5千人を超え、歌や踊りのステージもある春の一大イベントになりました。

模擬店収入は各地活の収益となり、地域の大切な自主財源確保の場になっています。事業実施のためのクラウドファンディングや、コミュニティビジネスを含めた活動の地域成功事例として、区を越えて広く知られるようになりました。

「桜通りde桜まつり」により、桜並木の課題を知ってもらうという当初の目的は果たされました。

しかし、依然として桜の継承については未解決のままです。平成30年の台風21号では、港区は甚大な風害に見舞われ、桜も数本が倒れました。けが人は出ませんでしたが、今後、人災が起こる危険性もあります。

あらためて磯路地活・区役所・まちセンが同じテーブルにつき、市の都市景観資源にも登録された桜通りをどのように継承していくか、どのような町にしていくのか、話し合いが再スタートします。

「大阪市地域公共人材バンク」を活用して、ランドスケープの専門家に別事業ですでに磯路に関わってもらっている、ということは織り込み済みです。

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

 

【港区コミュニティを科学する③-3】人の和

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