• 梶原

【浪速区×情報発信】選択肢を提供すること


浪速区まちづくりセンターのアドバイザーと支援員に浪速区のまちづくりについてインタビューしました。

平井 裕三 ひらい ゆうぞう 浪速区まちづくりセンター アドバイザー 平成30年浪速区まちづくりセンター支援員、平成31年より現職。

笹部 建 ささべ たける 浪速区まちづくりセンター 支援員(平成31年より) 関西学院大学・桃山学院大学 社会学部 非常勤講師

金井(Cラボ顧問) 浪速まちセンは、特に情報発信が活発ですね。そこに注力する背景やどのように情報発信を「実装」しているか教えて下さい。

平井 私はもともと、病院や特別養護老人ホーム、デイサービスなど福祉に携わっていました。福祉の世界では、支援者は当事者に寄り添ってエンパワメントする立場にあります。当事者一人に対して、支援者は多ければ多いほど安定して支えられるので、支援者が一人で当事者の課題を背負うことは危険だと考えるのです。

まちセンに入って感じたことは、地活の会長や役員の方が「任せておけ」と自分たちだけで何でもやろうとされることです。私たちは、自分たちだけで頑張ろうとせず、地域のリーダーに色々な選択肢を示すことも心掛けています。

そのために、情報発信が欠かせません。とあるアメリカの自治体が、防災について「ここまでは行政で頑張ったけれど、この点はできなかった」と住民に情報開示したところ、多様な解決案が出てきました。情報を共有することが大切です。

浪速区の町会加入率は3割です。浪速まちセンでは、残りの7割の方にも情報が届くようにSNSを始めました。

ブログ「なにわにくらす」は、ほぼ毎日更新しています。浪速区のローカルメディアとして、区内に暮らす人々の多様な「知りたい」に応えられるような情報の質と量にはこだわっています。

FACEBOOKでは、イベントの案内をしたりリアルタイムで様子を伝えたり、終わってから感想を載せたりしています。ツイッターでは、台風で道が塞がっていることなど、今この瞬間に知らせたい情報を発信しています。

住民の方々からは「おかげで地域の夏祭りの詳細が分かった」、「隣の地活でやってたあの行事、うちでもやれるかな」、「日本語学校の先生と知り合いやったら、外国人の生徒さんを地域の盆踊りに誘ってくれへん?」と想像以上の反響があり、次の活動につながっていくようになりました。

また、普段から私たちが発信するメディアに触れておいてもらうことで、災害時にも緊急情報を伝えることができます。常日頃の情報発信は、「防災」対応でもあるんです。

「浪速区 広報なにわ」令和元年7月号

誌面中央のQRコードを読み込めば、夏祭りの詳細にアクセスできます。

金井 情報発信によってリアルなネットワークも広がり、そこから地域のリーダーや区民に新たな「選択肢」を提供することができるのですね。今年度はどんな取り組みがありましたか。

平井 浪速区の地域の夏祭りである「大国盆踊り」に多くの留学生が参加してくれ、日本語を勉強する留学生が地域の担い手になる可能性を感じています。

交流が始まった経緯については【浪速区×外国人】まちづくりの始め方に、参加した留学生の感想については【浪速区×留学生】YOUは何しに日本へ? で取材してもらっています。

盆踊りに参加した留学生の中には、その後、地域の太鼓の練習に加わったり、子ども食堂を手伝い始めたりした人もいます。

あと、外国人専用の就労インバウンドトレーニング施設「YOLO BASE(よろベース)」と一緒に、外国人のための成人式も行いました。今年、浪速区には700人の新成人がありましたが、うち半分は外国籍の方です。しかし、区が主催する「成人の日記念のつどい」には外国人の出席は一人もありませんでした。

それでは寂しいと企画してみたところ、15名の新成人を祝うことができました。来年は100人を目標にしています。そして、それが実績として認められ、いつか区ともコラボできたらいいなと思っています。

また、子ども服の寄付を募ることになった時には、大手通販会社で働く大学の同期に相談しました。「流通の担当者に聞いてみるわ」とすぐに手配してくれました。地元のMEGAドン・キホーテ新世界の方々も快く協力して下さり、全部で500着ほど集まりました。配布については、家庭環境や子どもの事情をよく知る地域のケースワーカーや民生委員の方々が親御さんへ声を掛け、本当に必要とする人に届けることができました。

YOLO BASEと企画した成人式

金井 多くの団体や人とつながることによって、様々な場で課題解決が進んでいるのですね。笹部さんは大学の社会学部で講師をされていますが、アカデミックな視点から気づいたことや、反対に自身のアカデミック面に影響していることは何かありますか。

笹部 私自身の研究テーマはメディア文化なのですが、社会学の研究分野は多岐に亘り、個人的には他の専門分野の研究者との交流は多くありませんでした。しかし、まちセンの支援員となり、まちづくり系の研究者との交流が増えてきました。

まちセンで浪速区の歴史の深さに触れ、学生にとってもよい勉強になるだろうと思い、2回生の受講生たちを同和地区でのまち歩きに連れて行きました。その際に専門の研究者に事前授業についてアドバイスをもらうなどして、ゼミを組み立てました。

今は、学生と地域をつなげることも、研究者としての役目だと感じています。来年度サバティカルを取得し海外研究が決まった先生からは、まちづくりゼミの代理を任されました。ここの学生たちをまちへ連れて行き、地に足の着いた議論をさせてみたいと思っています。

学生を地域へつなぐことと同時に、地域の親子の皆さんを大学へ案内する日も作りました。大学へ行っていない保護者やその子どもたちに、大学を身近に感じてもらい、お子さんの進路選択の一つとして考えてもらう試みです。子どものキャンプへ同行した時には、火のおこし方や飯盒炊飯も教えました。私にとっても新しい体験ばかりです。

現在、大学で担当している1回生の少人数クラスでは、平井さんたちに来てもらい、ダイレクトロード※を実施しました。大学と地活、アカデミズムと地域活動がゆるやかに交わり始めています。

博士論文は文化人の歴史をテーマに仕上げているのですが、これまで私が研究してきた文化人らに加え、大阪の芸能や文化、名望家にも焦点を当てながら研究を進めたいと思っています。

災害協力シミュレーションゲーム「ダイレクトロード」

ダイレクトロードは、各自が持つ情報を共有して統合し、全体像を把握していく「ジグソーメソッド」という学習手法が、災害対応の過程に似ていることに着目して、神戸市消防局職員が開発した無料で使えるカードゲーム型の防災訓練教材です。

神戸市HP

子どもたちとキャンプ

金井 これからの目標や今後取り組みたいことはありますか。

平井 計画は計画であって先のことはわかりません。情報発信し続ける中で、地域と色々な縁が生まれてきました。突然キーパーソンとつながり、それが突破口になったりもします。そういうような感じで、自然体で縁ができたところから、活動を進めようと思っています。

浪速地域活動協議会がCSO賞を受賞!

様々な社会課題の解決に、先進的に取り組む団体を表彰するCSOアワード2018。 なんと浪速地域活動協議会がCSO賞に選ばれました!今回報告した事業は、浪速地域で行われている学習支援や子ども食堂などの子育て自立支援の取組みです。地域だからこそできる独自のやり方で地域の課題を一つ一つ丁寧に対応する姿勢が高く評価されました。

浪速区役所FACEBOOK

このことは新聞でも取り上げられ、浪速地域の歴史や現状が広く知られるきっかけとなりました。今では、教員をめざす大学生が学習支援のボランティアに来てくれたり、正月には大手スーパーから鏡餅の寄付があったりしました。

自立するためには、周りに依存先をたくさん作ることです。まちづくりにおいても、情報を開示して色々な人とご縁を作ることが課題解決への近道だと思います。

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

#浪速区 #自治

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