地域コミュニティづくりを専門とするCラボでは、「楽しい学校・教員コンサルタントSecond」の前田健志さんをゲストに迎え、前回に引き続き、新しい教育について伺いました。
セコンド
事業主名の「Second」には、子どもたちと接する先生をファーストと位置づけ、リングで戦うボクサー(先生)をセコンドとして助ける、という意味が込められています。助けるとは、教員も生徒も楽しいと思える学校をつくること、つまり「生徒の心に火をつける」教育活動をサポートするということです。
どうやって火をつける?
A高校の地域課題を研究テーマにした「総合的な探求の時間」では、授業案を作成した先生たちの思いやポリシーをそのまま残しつつ、前田先生は、生徒にどのように火をつけるかアドバイスし、ティームティーチング(数名の教師がチームをつくり、複数学級の生徒をグループ分けする授業スタイル)で授業を展開しました。
担当教員へのアドバイス前の指導案
1限 【ミッション】町の魅力や課題を見つけてみよう!
2限 町を探検して、気になった場所の写真を撮影する
3限 探検での気づきをヒントに、ポスター「町の活性計画」を作成
4限 班ごとにポスター発表。Q&A、教員コメント
アドバイス後に改善した指導案
1・2限 【ミッション】特定せよ!
各班に配られた町の「ある場所」の写真を町に出て特定する
探検中に心が動かされたり気になった場所を1枚だけ撮影する
3限 なんでその写真を撮ったの?
班で尋ね合い、班全体の写真をつなぐタイトルを決める
4限 ラウンドテーブル
班を再編成して、町に見つけた魅力や課題を新しい班で発表
成果を冊子にして町の商店街へ配布し、平和町プロジェクトにつなげる
この授業の目的は、身近な地域に対する関心を高めることです。アドバイス前のねらいは、町の魅力や課題を切り口に「イノベーティブな思考を育む」ことでした。
前田先生は、『全人類がリサーチャー!特定せよ!』という関西テレビの番組をヒントに、子どもがわくわくする【ミッション】を提案しました。生徒は喜んで町へ出て、普段何気なく通り過ぎている町に目を向け、チームで協働して探し当てます。心に残った場所を言い合うことで、自分とは違う他者の視点に出会いました。
イノベーションは、知と知の組み合わせから生まれます。他者の視点を介して物事を多面的・多角的に捉えられるようになることは、「イノベーティブな思考を育む」とイコールです。教員のねらいを噛み砕き、子どもを刺激する探求的な学びに落とし込んでいく作業が、教育コンサルティングの仕事の一つだとわかりました。(つづく)
「イノベーションの本質は、新結合。」シュンペーター(経済学者)
“Development in our sense is then defined by the carrying out of new combinations.”
Schumpeter 1934
ビジネス+IT 2018年9月10日(ネット記事)
イノベーションの基本原理は「知と知の新しい組み合わせ」だと早稲田大学の入山章栄氏。「既存の知」と別の「既存の知」の新しい組み合わせが、「新しい知」を生み出す。これはイノベーションの父と呼ばれる経済学者ジョセフ・シュンペーターが「ニューコンビネーション(新結合)」として、80年以上前に提示した考えであり、今でも世界のイノベーション研究では、その根底にある原理の一つだという。
取材・文:梶原千歳
イラスト:阿竹奈々子
第2号 【地域×学校②】セコンド、探求する時間
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