地域コミュニティづくりを専門とするCラボでは、「楽しい学校・教員コンサルタントSecond」の前田健志さんをゲストに迎え、前回に引き続き、新しい教育について伺いました。
カリキュラム・マネジメント
文科省が発表した新学習指導要領には、予測困難な時代だからこそ子どもたちに「生きる力」を育んでほしいという思いが込められており、高校ではカリキュラム・マネジメント(カリキュラム創造)により、教科横断的・課題解決的なアプローチが求められています。しかし、学習指導要領にはその方法論は示されていません。現場の教員には戸惑いや動揺が広がっています。
「誰しもわからないと不安を感じるけれど、少しのきっかけやサポートがあれば、新しい教育に対応できると僕は確信しています。そもそも学校の先生は教材研究にも熱心で真面目な方が多い。加えて、子どものことが好きです。教師がブラックな職種と呼ばれるのも、適正な手当がなくても残業するからです。先生方の努力がもっと報われるようにしたい。生徒にとっても先生にとっても、楽しい学びの時間になることが報われることだと思います。(前田先生)」
生徒の心に火をつける授業 「○○を科学する」
「仮想の学校 平和町高校」という学校は仮想なので、実際にはありません。学校の制限や教科を超えて、本当にやりたいと思う授業を高校の学習範囲内において自由に教員たちがつくり、その授業を受けたい生徒たちが自主的にやって来ます。授業者として参加を希望する教員は30人以上になりました。
今年3月に第1弾「コンビニを科学する~平和町に理想のコンビニを創ろう~」が開かれ、5教科5名の教師とともに4校20名の生徒が金沢大学附属高校の教室に集いました。
身近なコンビニをテーマに、社会的アプローチなら価格決定の在り方について、数学的アプローチなら利益を最大化する陳列を考える、理科的には視野角や目の構造、英語的には外国人目線からもよりよいコンビニを提案する、国語的にはポップと言葉の凝縮について、と多角的にコンビニを科学します。授業は計3時間30分、生徒の目は輝き、次は丸1日、いや合宿で!というほどの反響がありました。
「この学びを受けて、生徒たちは普段の授業も他教科とつながるのではという視点で受けるようになり、有機的・構造的な学びを自らするようになります。1回で学べるコンテンツは少ないですが、学び方は確実に変えられると思います。総合的な学習の時間と各教科の授業の中間的な役割を担える可能性があります。ただつなぐだけでなく、各教科が中心テーマにアプローチしているコアカリキュラム的な実践でもあります。(前田先生)」
次回は夏休みに「平和町高校」が開講します。
第2弾 参勤交代を科学する※
第3弾 コンビニを科学する パート2
第4弾 言語を科学する 動物と会話できるのか?
第5弾 教室を科学する
※「参勤交代を科学する」は、「加州大聖寺藩参勤交代うぉーく」と関連する地域連携のプロジェクト型学習です。
心に火をつける(前田先生より)
自分の関心があることに共感してもらうのって難しいですよね?
だって、自分にとっては当然のように好きなことだけど、相手が好きとは限らない。
もし相手がそのことについて関心がなかったら、みなさんはどうしますか?
相手が何に関心があるかを聞いて、それと自分の関心があることをつないでいけたら、共感してもらえる確率がグンと上がります。
これは教育活動においても同じだと思います。
楽しい学びをするために大切なことは、生徒をマーケティングする力です。
生徒に火をつけられる先生は、普段から生徒が何に興味を持っているかにものすごくアンテナを張っていると思います。
よく観察したり質問をたくさんしたりして生徒のことを知ろうとする。
相手の関心を把握した上で、どうやったら彼らの関心事と、学んでほしいと思っている事をつなぐことができるかを考える。
すべての教育活動において、生徒の興味や関心を皮切りに、学習指導要領で提示された単元にアプローチして、ただの面白いを超えて「わくわくする、もっとそれを考えたい!」と思わせることを大事にしています。
地域学校協働活動のスタート時にも、まずはお互いによく知り合い、自分の関心と相手の関心を考えてつないでいくことを大事にしてみてください。心に火がつくプロジェクトは、きっとその後に生み出せると思います。
(おわり)
取材・文:梶原千歳
イラスト:阿竹奈々子
第3号 【地域×学校③】関心の接点、○○を科学する
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