• 梶原

【港区コミュニティを科学する②】3 区民まつり


前回に引き続き、前港区長の田端尚伸氏に、どのように地活の事業展開をなされたのか伺います。

キーワードは、【強みを活かす】、【横糸と縦糸】、【仕組み】、【課題の可視化】です。

今号では【仕組み】と【課題の可視化】についてお聞きしました。

【港区コミュニティを科学する②】1 田端尚伸氏

【港区コミュニティを科学する②】2 横糸と縦糸

インタビュー

田端氏的アプローチ 【仕組み】

港区の二大地域行事は区民まつりと連合町会対抗運動会(以下、運動会)でした。

40年近く続いてきた区民まつりは、毎年8月の第2土曜日の夕刻から、櫓となる舞台を中心として八幡屋公園多目的広場で開催していました。

夏の暑さが厳しくなるとともに、夜型のイベントなので子どもの参加が難しい状況でした。また、2年に1回の運動会は、当日は地域対抗で盛り上がりますが、当番は各地域持ち回りで負担が大きく、毎回選手集めに奔走する地域もあり、しんどいという声も聞こえていました。

平成25年度の区民まつりと運動会をどうするか?新しい市政改革として「地域から市政を変える」と呼びかけ、地活を形成していただき、地域主体の取り組みを促進しているのだから、地域行事として象徴的な区民まつりも今まで以上に多くの区民が楽しんで参加できる形に変える必要があるのでは、と思いました。

しかし、最初にお答えしたように行政は地域をマネジメントできません。

地域の役員には、これまで行ってきた事業は同じ形で実施して次代に引き継いでいくことが大事だと考えられている方も多くいらっしゃいます。前年の区民まつりで、金子さんが地域に本部テントを1メートルほど動かしたいと提案しても認められなかったとの話も聞いていました。

それまでの区民まつりや運動会は、コミュニティ振興事業として、区役所が事業者を公募、港区の場合、コミ協が毎年受託して実施してきました。区役所は事業の大枠を示し、詳細はコミ協が地域の代表者の意見を聴きながら決定します。

各地域の代表者は、地域の会長から選ばれて話し合うのですが、その結果については地域に持ち帰って会長など役員の賛同を得る必要があり、必然的に「前年通り」となることが通常でした。

そこで、平成25年度に「コミュニティ育成会議」(以下、育成会議)を区役所内に設置、委員は各地域の会長(地活、地振、社協)と区長とし、その下に、区民まつり部会や文化・スポーツ部会等を設置して、部会に公募の区民や地域の若手・中堅メンバーに参画いただくようにしました。

そして、育成会議の開催・運営と、そこで決まった事業を実施する事業者を公募することとし、引き続きコミ協が受託しました。

部会には、前例にとらわれない議論をしていただきたいとお願いし、実施案がまとまると育成会議に諮ります。育成会議でも意見は出るものの、若い人たちが考えたことだから、と実質的に追認・承認いただくことが多くなり、部会からの提案に実行力が生まれて「変える力」となりました。

でも時々、「これはあかんわな」と、育成会議のチェック機能も働きました(笑)。

結果的にその年の区民まつりは、8月の夜から10月の昼間へ、場所は八幡屋公園全域に、参加団体も公募のうえ約50団体に、子ども向けイベントや出展ブースも盛りだくさんとなりました。ちょうど2年に1回の運動会の年だったので、テーマを「防災」として、プログラムを防災バケツリレーなどに変え、当日参加もOK、新しい住民も参加しやすい内容となりました。

子どもや家族連れが飛躍的に増え、お天気も良く、広大な八幡屋公園が大いに活気づきました。ボランティアによる分別収集のエコステーションも充実、環境にも優しい区民まつりになりました。テントを1メートル動かすことすらできなかった区民まつりが大きくチェンジしました。

そして、この区民まつりで、うれしい副産物が生まれました。

それまでの区民まつりは、プロの商人が屋台や露店を出店していましたが、この年から、地活に模擬店を出店していただくことにしました。初年度は7地域だったと思いますが、予想以上の売り上げ、口コミでそれが他地域にも広がり、結果的に3年目に全11地域の模擬店が揃いました。

最初は地域間でメニューや値段を調整、今では地活ごとに看板メニューができ、自慢の味を競い合うほど盛況です。

模擬店の出店は地域のコアメンバーだけでは足りず、自ずと新しい方に声をかけるようになり、担い手発掘の機会にもなります。この後、区民まつりだけではなく、天保山まつりや桜まつりなど、模擬店の機会があれば地域から積極的に出店されるようになり、地活の貴重な財源となっています。

地活への補助金は、事業の全体費用の75%で、残る25%は地域が自主財源で負担します。

他の区ではその負担が厳しく批判が出る地域もあると聞きますが、私が在任中、地域からこの自己負担がしんどいという話は聞きませんでした。

田端氏的アプローチ 【続・仕組み】

もうひとつ「仕組み」のお話を。他の区でも一般的と思いますが、港区でも月1回、行政と地域の連絡・調整のために「連合町会長会議」を区役所で開催していました。

全地域で地活が形成された後、平成25年度から「合同会長会議」として、各地域から地活、地振、社協の会長に出席いただくようにしました。従って、最大1地域3人になります。このことが、結果的に、会長さん方に地活の理解を深めていただくために効果的だったと思います。

その時々の行政からの依頼や連絡を、地活で受けるのか、地振で受けるのか、そして、どこで受けるかは全地域で統一しようと、その場で即決いただけましたし、そのためには、地活にあまり関心のない会長にとっても地活についての理解が必要になります。

また、地活の活動の紹介などをしていただくことで、地活でそんなことができるのかなど、地活についての理解を深めていただく機会にもなりました。

トップの理解が深まれば、地域の活動もスムーズになります。

「地活ってなんや?」「地振より上か?」といった、形成期の混乱、困惑が、地活として地域計画を考えていただいたり、模擬店を出店したりすることで時間とともにフェードアウトしていきました。

なお、この合同会長会に続けて、先ほどの育成会議を開催することにしていました。

田端氏的アプローチ 【課題の可視化】

ある時期、ある地域で車上狙いが急増しました。その地域では、夜のパトロールを定例的に実施されていたのですが、犯罪情報をお伝えしたところ、パトロールの時間やルートを変えるとともに、オリジナルの啓発チラシを作って、駐車している車のワイパーに挟み込んでいきました。

すると、間もなく効果が表れ、車上狙いが減少したのです。

日常的に実施している防犯パトロールを、行政が情報を提供することによって、地域の自主的な判断で「車上狙い」に目的を絞り込み、犯罪の抑制という効果につながりました。

私が思っていた、行政と地域活動が有機的に連携できれば、ということが具体化された一例です。

地域課題をデータなどで可視化して地域に伝えることは非常に重要です。私は、ひったくりや車上荒らしなど、区内の街頭犯罪の発生状況を地図に落とし込み、区内のどこで、どんな犯罪が起こっているか可視化しました。

港区HP(港区内街頭犯罪発生状況)で毎月更新するとともに、先ほど申し上げた、合同会長会議で各地域の会長に直接お渡ししました。

データには思想信条がありません。やって下さいと言われれば怒りたくもなるでしょうが、客観的なデータに怒る人はいません。

街頭犯罪に関わらず、区が持つ情報、たとえば地域別の高齢化率や人口推移などを地域に分かりやすい形にして示すことで、地域は自らの課題に気づき、地活本来の目的である地域課題の解決に向けた取り組みへの「きっかけ」になればと思いました。(つづく)

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

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