梶原
2019年8月28日
最終更新: 2021年5月14日
地震、津波、台風など災害が起きた時に自分の大切な命を守ることはできますか?
これから大人になるキミたちに「防災力」をしっかり身につけてほしい。
「U-15のための防災ワークショップ ジュニア防災キャプテン」第2回目を追いました。
前回の記事はコチラ。【ジュニア防災キャプテン】1 子ども目線
主催 ママコミュ!ドットコム
代表 出水 眞由美 日本防災士機構認証防災士
ママと家族がコミュニティとつながり、子育てを通してコミュニティを元気にする、
そんな活動をめざしています。平成27年設立、非営利活動を行う任意団体。
講師 わたし×防災を科学する アイビーラボ
代表 出水 季治 日本防災士機構認証防災士
阿倍野区まちづくりセンターアドバイザー
子どものアタマで考え、子どものココロで感じ、子どもの視点で行動ができる。
そんな未来の防災につながる活動をもっと広げたい。平成30年設立、非営利活動を行う任意団体。
今日の見どころ 出水眞輝君(小学6年生、全国最年少防災士)
ジュニア防災キャプテン認定講座
防災の基礎知識と実践力を育む
7月28日(日)、150名を超える参加者がワークショップへやって来ました。
出水季治さん
災害が起きた時に備えて、知っておくべき場所は避難所だけではありません。
今日は、防災士と一緒にモデルコースを歩いて、災害時に役立つ場所を探しましょう。
さあ、帽子をかぶって水筒を持って、出発!
ベンチを持ち上げると…、かまどが出てきました!
天王寺区役所の防災担当の山中さん(右)
子ども この倉庫には何が備蓄されているんですか?
山中さん 水や毛布、テントもあるよ。
出水さん これは特別な自動販売機で、災害時には無料で飲み物が提供されるんだよ。
子ども えー!ラッキー!すごーい。
出水さん Wi-Fiにも対応しているから電気や電話が止まっても安心だね。
でも、勝手に飲み物が出てくる訳じゃないんだ。
この機械を管理する人が操作をしないといけないんだよ。
(中略)
出水さん
みんな、お帰り。暑かったね。今、回ってきたところを一緒に振り返ろう。
一番最初にどこへ行った?
子ども
公園!
出水さん
公園に何があった?
子ども
かまどベンチ!
出水さん
地図のどこにある?かまどベンチはどんなことに使える?ワークシートに書いてみよう。
出水さん
公園の次にどこへ行った?そう、災害時備蓄倉庫だね。そこには何があった?
見たこと、学んだこと、思い出してみて。
一時避難場所、避難所、災害防災無線スピーカー、AED、災害時帰宅支援ステーション…、
災害時に役立つ場所や物をいっぱい見つけたね。
普段は気にしてないと思うけど、みんなの身近にはもしものときに役立つものがたくさんあるんだ。
家の近くや通学路など、身近な場所にどんな所があるか、帰ったら調べてみてね。
おやこ防災クッキング
災害時に“美味しく食べる”コツを学ぶ
お昼は、料理研究家の南井由希子さんによるアルファ化米を使ったクッキング講座です。
南井さん
災害が起きたら、いつも食べているような美味しいものが食べられないかもしれません。
そんな時に、ちょっと工夫すれば美味しく食べられる方法を知っておくと安心です。
賞味期限が比較的長ければ、非常食でなくても構いません。いつも食べているもの、自分や家族が好きな味のものを備えることが、いざという時の食ストレス対策になります。
食物アレルギーのあるお子さんは特に、安心して食べられるものを備えておくことをお勧めします。
今日のメニューはチキンライス!
1
お鍋にトマトジュースとスープの素を入れてコトコト。
それをアルファ化米の袋に注ぎます。
(アレルギー27品目不使用のスープの素がスーパーで比較的簡単に手に入ります)
2
フライパンで、玉ねぎ・鶏肉・ミックスベジタブルを炒めて、
塩胡椒とケチャップで味付けます。
3
アルファ化米と具を混ぜると…、あら不思議、チキンライスの出来上がり!
混ぜ混ぜタイム。しっかり混ぜてね、がんばって!
南井さん
災害時には新鮮な野菜が手に入らない場合もあります。
そんな時はミックスベジタブルや乾燥野菜が重宝しますよ。
日頃から、ご飯を作る時に、もし電気・ガス・水道が止まってしまったら?と考えてみて下さい。
実際の災害時を想定することで、何を備えておけばいいのか必要なものが分かってくると思います。
お水が止まると、食器を洗うことも出来ませんから、お皿にラップを敷いて使うなど、
工夫するのもいいですね。
今回はプラスティックのコップに食品用ビニール袋をかぶせて食器として使いました。
こうすればビニール袋だけ替えると洗い物をしなくても衛生的に次の食事に使えます。
ミライの防災
プロフェッショナルと考える
講師に招かれたのは、災害時の行動と心理を科学するプロフェッショナル、元吉忠寛さん(関西大学 社会安全学部 教授)です。
人はなぜ逃げないのか?
元吉先生
災害が起きると人はどんな心理状態になると思う?どんな行動をするんだろうね。
実は、テレビのニュースなどで情報を知ることだけでは、人はなかなか動かないんだよね。
反対に、目の前で倒れている人がいると、慌てて助けるよね?
これは、人の判断は感情によって大きく左右されるからです。
だから、ニュースで特別警報が流れても、逃げようとしない。
じゃあ、どうすればいい?
今日はみんなとタイムラインを作りたいと思います。
タイムラインって何?
災害が発生する前から、いつ、誰が、どのようなタイミングで、何をするか…を計画にしておくことをタイムラインと言います。タイムラインを作ることによって、災害の時に誰が何をするのかが分かれば、慌てずに落ち着いて早めの行動が取れるようになります。
『タイムラインで学ぶ 防災対策 ワークブック 台風編』より 著者:元吉先生
元吉先生
まずは自分の家の危険について調べよう。
「重ねるハザードマップ」というのがインターネット上に公開されています。
お母さん、お父さん、お子さんと一緒にマップを開いてご自宅の住所を入力してみて下さい。
洪水・土砂・津波、自宅周辺にはどんなリスクがあるかな?
~タイムラインを作る手順~
1 自宅の危険について調べる
2 前日までに準備するものは何?
3 やっておくことを考える
4 タイムラインを書いてみる
~作成中~
子ども
えーっと、私の地域は洪水の危険があるけど、マンションの3階に住んでて、ここまでは浸水しないし、土砂災害の恐れもないから、台風が来たら避難するんじゃなくて、自宅待機することにしよう。
だから…、前日には食料を買いに行って、懐中電灯とかラジオとか必要なものを用意して、当日は家族で家にいてニュースを聞こう。
あ、ちゃんと雨戸も締めとかないと!
それぞれにタイムラインを書いたあと、何人かが前で発表しました。
みんな、しっかり考えて計画していて、すごい!
出水眞由美さん
今日学んだことは自分のためだけじゃなくて、家の人にも教えてあげて下さい。
命を守るための方法を周りの人に伝えることはその人たちの命を助けることにもなるかもしれません。タイムラインを見てもらって、災害が起こった時に誰が何をするか話し合いましょう。
自分の力で自分の命を守れるように、備えておこうね。
“U-15世代が主役“の防災に込めた想い
大阪府北部地震、台風21号による被害を経験した昨年。近い将来、高い確率で発生すると言われている大地震や気象災害を含めると、私たちの周りには様々な災害リスクが存在します。
私たちは災害で子どもたちが大切な命を失わないよう、「幼少期からの防災教育」に取り組んでいます。今は大人に守られている子どもたちも5年後、10年後には立派な大人になります。自分だけでなく大切な人や家族がいるかもしれません。
いつ災害が起きてもベストの判断ができる「ホンモノの防災力=知識+判断力+行動力」を備えた大人になってほしい、そう願っています。子どもが主役になる社会が災害に強い社会になるよう、長い目で取り組んでいこうと考えています。
ママコミュ!ドットコム
代表 出水 眞由美(防災士)
取材・文:梶原千歳
イラスト:阿竹奈々子