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  • 梶原

【鶴見区×イベント企画】いつも離陸体勢


【鶴見区×イベント企画】いつも離陸体勢

鶴見区まちづくりセンターの小林竜子アドバイザーに鶴見区のまちづくりについてインタビューしました。

小林竜子 こばやし りゅうこ 平成24年鶴見区まちづくりセンター支援員、平成30年より同アドバイザー。

 

鶴見区の由来 鎌倉時代、源頼朝が富士の裾野で狩りをした時に、千羽の鶴に金の短冊をつけて放したところ、低湿地であったこの地に飛来して住みつき、その鶴を見物に来る人たちが多くあったことから「鶴見」と名づけられたと言い伝えられています。大阪市の最東部に位置する鶴見区には花博記念公園鶴見緑地があります。

 

Q 今、特に力を入れていることは何ですか?

これまでも今も「地域の自律」に力を入れてきました。私たちまちセンはいつも「離陸体勢」なんです。中間支援組織がなくても、地活協の認定要件を満たし、地域が自ら課題を見つけ解決できる、地域が主体的に事業に取組めることを念頭に支援しています。

しかし、まちづくりセンターにネームバリューもなく、信頼もない中で「自律」をいきなり促すのは無理がありましたので、段階的な支援を心がけてきました。

最初の2年ほどは(平成25~26年度)、会計の透明性、会議運営(運営委員会や部会)、広報支援などを地道に行ってきました。スキルアップのために「知恵出しワークショップ」なども行いました。

同時に、地域活動協議会を区民の皆さまに知ってもらうため、「つるカフェ(気軽に語り合う場)」「つるばた会議(鶴見区大井戸端会議)」「区民・事業所アンケート」を行いました。

「つるカフェ」は、地域活動に参加しにくい若いママから意見を聞くために、平日の昼間に公園に出向き、クイズやアンケート、紙食器づくりなどを行いながらおしゃべりの場を作りました。「つるばた会議」は地活協の運営委員の有無を問わず、どなたでも参加できる意見交換の場で、現在も続けています。

平成27年度からは、地活協の広報担当者に視野を広げてもらうことを目的に、まちあるき&撮影会(地域の小ネタ探しプロジェクト)を始めました。

実は、地活協発足当時から、区の方針で全地活協に対して広報紙の発行が義務付けられました。(「広報」が、必ずしなければいけない区長の認定分野に)

どの地域も行事報告中心に広報紙を作成するため、2年目、3年目になると同じことの繰り返しでネタが尽きてくるのです。ネタが尽きると、区から言われたから仕方ない「やらされ感」が出てくるわけです。

掲載記事は、工夫次第で無限に紹介できることがあるということを実感してもらうため、地域の魅力を見つけるまちあるきを一般参加募集で始めたわけです。

これが徐々に人気が出てきたので、2年目からは「鶴探(つるたん)~大人の社会見学~」へと発展し、事業所見学とまちあるき、ミニつるばた会議(地域の会館での話題提供と意見交換会)というプログラムを毎回行うことになりました。見学先は、利用させていただく会館のある地域と検討し、紹介いただいた回もありました。

いわば出前のミニつるばた会議で、地域の会館を利用することではいくつかの相乗効果が生まれました。訪問先の地域の皆さんが多数参加する場になったのは言うまでもなく、他地域の地活協関係者も意外と訪れたことのない会館を見学することができること、さらに、地活協と接点のなかった区民が地域活動を知るきっかけになることです。

また、この鶴探は、事業所と地活協がつながる機会にもなりました。もちろん、当初のねらいであった各地域の広報紙づくりにも刺激を与えることができ、広報紙のネタにしてもらいました。

平成29年度からは、ツルラボ(鶴見区地域活動研究会)を始めました。

地活協発足5年目は、2回目の役員改選期にあたり、ようやく「地域課題を自ら見つけ解決する」ことに関心が向き始めた地域も出てきたので、この機運を後押しするとともに、課題が顕在化していない地域に対しては課題を見出すきっかけになることを目的としました。

1年目は誰もが関心のもてる「防災」をテーマに、毎回防災カードゲームとワークショップを実施しました。2年目は3つのテーマを設け、このテーマに興味を持ってくれそうな地域の会館で開催しました。そして3年目の今年度も引き続き開催中です。(1月30日が今年度ラスト)

2年目と3年目は、事例共有とグループトーク(研究討論)の二本立てでプログラムを構成しました。事例共有では、鶴見区内の地活協事業を徹底分析した結果と、テーマに即した区外の事例を報告、グループトークでは、ワークショップスキルを磨く場としても機能させるために、参加者に進行役や板書を行ってもらう回もありました。

一般参加OKなのですが、実際には地活協の運営委員さんが多く参加してくれます。驚いたことに、皆さん意外と隣の地域のことを知らないのです。ですから、特に後半のグループトークでお互いの取り組みを知ることに関心が高まってきています。

例えば、「地域福祉」の前半のテーマ「子育て応援」。「今のママ&パパたちが本当に応援してほしいことは何なのか?」について意見交換をしました。終了後、各地域で行われている「子育てサロン」のこの道20年というベテランのスタッフから「お母さんたちの話をもっと聞こうと思いました」と感想を頂きました。

「当たり前のように毎年繰り返して行う」ことから「課題に気づいて自ら計画を見直し次のステップ」へ。これが、私たちがめざす地域の自律の第一歩です。

Q 「変化」の秘訣は何でしょうか?

一つ目は、役員改選期というタイミング。

今まで通りではダメと思っていても変えることはなかなかできません。改選期であれば、部会長やメンバーを新しくしたり、部会そのものを見直したりできます。最近では、改選期でなくても、部会の見直しを行う地域があります。事業に至っては柔軟に毎年改善していく地域がじわじわっと増えてきています。

二つ目は、トップの柔軟性。

会長や部会長などのトップが仕事を抱え込んでいると、スタッフは指示待ちばかりになり、常に上の意向を確認し、自ら考えて行動しなくなります。トップは柔軟に若いスタッフに任せることも重要で、そういう地域では、グイグイと事業改革を行う傾向にあります。

三つ目は、地域課題解決の手応え。

事業テーマに賛同する仲間がいて、毎年バージョンアップを繰り返し、参加者からも手応えを掴むとしめたものです。例えば「防災」テーマで試行錯誤を繰り返していた地域では、小学校6年生の土曜授業でオリジナルの防災プログラムを作り、子どもたちに防災ワークショップを体験させました。もちろんファシリテーターは地域のみなさんです。

Q 小林さんがまちづくりに携わるようになったきっかけは何ですか?

もともとは大学でデザインを専攻し、照明器具メーカーの企画開発室に就職しました。この頃、マーケティングに興味を持ち、先輩の企画会社に転職し、そこで大手メーカーの商品計画や市場調査、行政の調査等に携わりました。この先輩は企画書の書き方などの本も書いていたので、結果的に企画書作成のノウハウも学べたように思います。

その後、フリーになり、主に調査系のコンサル事務所の仕事をするようになりました。ここで、兵庫県丹波地域の地域ビジョン委員会に関わるようになるのです。地域ビジョンとは、「歴史、風土、文化などを共有する広域的な圏域ごとに、地域住民が自ら地域の将来像を個性豊かに描き、その実現に向けて取り組む指針」。つまり、住民参加でつくる地域総合計画です。丹波地域ビジョン「みんなで丹波の森」のマスタープランづくりに関わりました。これをきっかけに、住民参加の公園づくりのための円卓会議の事務局運営にも携わることになります。

一方で、大阪湾・播磨灘・紀伊水道をめぐる全長1,500kmに亘る海辺・水辺を対象とする「なぎさ海道」プロジェクトのマスタープラン作成に関わり、地域学(海辺・水辺の調査)、ワークショップ(海辺・水辺の見学会)、ネットワーク(海辺・水辺で活動する住民団体をつなぐ)と事業展開を図りました。

ちょうどこの頃から、行政の事業で「住民参加」がキーワードとなり、住民の意向無くして公共事業ができなくなったのです。のちに「コミュニケーションデザイン」という見事なネームングのついたこうした取り組みに、気がつけば20年ほど関わってきた計算になります。

10年ほど前、北海道大学のCoStep(科学技術コミュニケーター養成講座)を受講しました。ここには、業界の違いを超えて共通の課題があります。「間に立ってつなぐ」ことです。これは、まちづくりの現場でも欠かせない役割だと思います。

科学技術コミュニケーターとは 科学技術の専門家と一般市民との間で、科学技術をめぐる社会的諸課題について双方向的なコミュニケーションを確立し、国民各層に科学技術の社会的重要さ、それを学ぶことの意義や楽しさを効果的に伝達する役割を果たせる人です。今日、こうした橋渡しを担う人材が、大学や研究機関のみならず、社会のあらゆる場面で必要とされています。

Q 今後やってみたいことはありますか?

個人的な活動ですが、地元の兵庫県西宮市で「西宮まちなみ発見倶楽部」の代表をしています。

10数年前、西宮市に引っ越した頃、市役所に勤める知り合いに景観啓発事業に参加することを勧められたのがきっかけです。市の事業に10年ほど参加してきたのですが、事業形態が変わることを機に、当時の参加メンバーに声をかけ、継続して活動していきたいという皆さんとともに平成30年7月に任意団体を立ち上げました。

建築や土木関係者、主婦、OL、学生など多様な世代と世界観を持った人たちが集まっています。それぞれの専門性や関心事を活かして、まちなみから西宮の魅力を発見する景観啓発活動を盛り上げたいと思っています。

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子


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