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  • 梶原

【ジュニア防災キャプテン】1 子ども目線


【ジュニア防災キャプテン】1 子ども目線

地域コミュニティづくりの基盤となるのは、福祉・防犯・防災です。

今号では防災を取り上げ、未来の防災の担い手となる子どもを育成する「U-15のための防災ワークショップ ジュニア防災キャプテン」を取材します。

ママコミュ!ドットコム

主催 ママコミュ!ドットコム 代表 出水 眞由美 日本防災士機構認証防災士

ママと家族がコミュニティとつながり、子育てを通してコミュニティを元気にする、

そんな活動をめざしています。平成27年設立、非営利活動を行う任意団体。

 
アイビーラボ

講師 わたし×防災を科学する アイビーラボ 代表 出水 季治 日本防災士機構認証防災士

         阿倍野区まちづくりセンターアドバイザー

子どものアタマで考え、子どものココロで感じ、子どもの視点で行動ができる。

そんな未来の防災につながる活動をもっと広げたい。平成30年設立、非営利活動を行う任意団体。

 

地震、津波、台風など災害が起きた時に自分の大切な命を守ることはできますか? これから大人になるキミたちに「防災力」をしっかり身につけてほしい。 U-15(15歳以下の子ども)と保護者のための防災ワークショップです。

ジュニア防災キャプテン

 

ジュニア防災キャプテン認定講座 防災の基礎知識と実践力を育む

 

7月7日(日)、120名を超える参加者がワークショップへやって来ました。

講座は、火事や台風など、身近な災害のお話からスタートしました。

「台風は天気予報で分かるけど、地震はどう?いつ起こるか分かる?」 出水季治さん(防災士)が小さな子どもたちへ問いかけます。

阪神・淡路大震災は火曜日の5時46分、熊本地震は木曜日の21時26分、大阪府北部地震は月曜日の‎7時58分に起こりました。

「火曜日の5時46分、皆は普段どこにいて、誰と一緒?木曜日の21時26分は?」 小学校低学年の子どもにも伝わるように、具体的な問いかけを続けます。

「一方的に教わるスタイルでは本当の防災力は育ちません。防災では、正解が一つとは限らないのです。自分で学ぶ、考える、行動する、伝えることから、自分なりの正解を導くことを大切に考えています。」

地震はいつ起こるか分からない。子どもたちは、日常のなかにある見えない災害リスクについて、少しずつ考え始めます。

「じゃあ、自分の身を守るために、何を準備しておこうか?」

子どもたちは、グループごとに話し合います。水、缶詰、お菓子、懐中電灯、ヘルメット、アルミシート(緊急時に使う極薄のブランケット)…。たくさんの答えが出てきました。

「アルミシートは表と裏が金と銀になってて、使い方が違うって知ってた?百均でも売ってるから、自分で調べてみてね。」

出水さんは、全部は説明しません。

気になる、気になる。筆者はその場でスマホを検索。 “金色は熱を吸収しやすく、銀色は熱を反射しやすい。寒い時は金色を表に、暑い時は銀色を表に”して使うのが正解のようです。

知りたい、調べてみようという気持ちが、子どもたちのなかに自然と湧いてきます。

「私たちが大切にしているのは“子ども扱いしないこと”。内容が難しいかどうかは子ども自身が決めることであって、決して大人が決めることではないと考えています。今日の講座に参加してくれた子どもたちのキラキラとした目をぜひ見て欲しいです。」

関西テレビ 報道ランナー 平成30年3月1日放送

関西テレビ 報道ランナー 平成30年3月1日放送

出水さんの息子さんの眞輝君(小学6年生、全国最年少防災士)も、講師としてワークショップに参加し、子どもたちへ語りかけます。

眞輝君

避難所では、水は500mlのペットボトルが配られます。でも次にいつもらえるかは、分かりません。一気に飲む?少しずつ、大事に飲むよね。口飲みすると菌が繁殖するので、コップも防災リュックに入れておく方がいいよ。僕は色違いのプラスチックコップのセットを準備していて、友だちや家族がそれぞれマイコップとして使えるようにしています。

出水さん

自分の住む地域に一番長くいるのは子どもです。朝、学校に行って、夕方、習い事へ行ったり、公園で遊んだり、その時間の繋がりは、地域にとって、防災にとって、とても大事だと思います。もし、避難所が小学校になれば、小学校のことを知っているのは当然子どもたちなので、非常に戦力になると思います。

眞輝君

避難した後、お父さんやお母さんは自宅を片づけに戻ったり、外へ作業に出たりします。避難所は子どもと高齢者ばかりになります。めちゃくちゃ長い時間を僕たちは避難所で過ごさないといけないんです。だから僕は、友だちやお年寄りと遊べるように、折り紙やトランプ、ポータブルの将棋を準備しています。皆も、自分が好きな遊び道具を防災リュックに入れておくといいよ。防災リュックにおもちゃを入れてはいけないなんてルールはないんだから。

眞輝君と一緒にゲスト講師として参加していた坂本紫音君(高校1年生、防災士)は、「中学生や高校生は小さい子の面倒を見ることができるし、小学生にもお手伝いを頼むことができます。大人には、僕たち子どもたちに役割を与えてほしいと思います。」と言ってくれました。

子ども目線の防災は、大人もハッとさせられる講座でした。

坂本紫音君(左)、出水眞輝君(右)

坂本紫音君(左)、出水眞輝君(右)

 

おやこ防災クッキング 災害時に“美味しく食べる”コツを学ぶ

 

お昼は、料理研究家の南井由希子さんによるアルファ化米を使ったクッキング講座です。

南井さん

災害でライフラインが使えなくなった時や災害後の暮らしで一番困るのは普段通りの料理が食べられないことです。これまでの災害でも、食環境の変化によるストレスが多くの人の命や健康を脅かしてきました。そうならないように、非常食を使った栄養豊かなメニューを考案しています。

おやこ防災クッキング お稲荷さん作り

パックのアルファ化米に粉末のすし酢を入れて、混ぜ混ぜ。

一口大にして、市販の味付け油揚げ(長期保存可能です)に入れたら、お稲荷さんの出来上がり。

出水さん

僕は、ローリングストック※をお勧めしています。ただ缶詰を防災リュックに詰めておくのではなく、日頃から子どもや自分の口に合う缶詰や加工品を探して、蓄えておき、年に1回はそれらを上手にアレンジして美味しく食べる。そして、また買い足す。

災害時も食べ慣れている味を口にできればほっとしますし、例え缶詰の保存期間が10年であっても、10年後に食べたいとは思わないでしょうし、10年後に入れ替えるとも思えません。

防災食を備蓄すると考えずに、日常の延長として捉えることが大切です。

※ローリングストック 普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法。

トクする!防災 備蓄の心得

 

ミライの防災 プロフェッショナルと考える

 

講師に招かれたのは、100年続いた避難所の景色を変えるものづくりのプロフェッショナル、水谷嘉浩さん(避難所・避難生活学会理事、Jパックス株式会社代表取締役)です。

水谷さん

日本の避難所は硬くて冷たい床に雑魚寝するスタイルで、100年前から変わっていません。

一方、海外ではプライバシーが守られ、心身共に安らげる避難所がスタンダードになっています。

日本で大きな問題となっている災害関連死という言葉さえ、海外では耳にしないのです。

 

日本経済新聞 2019年7月8日

災害関連死 1995年の阪神大震災では、避難所でインフルエンザが流行するなどして、災害関連死は

約920人に上った。2011年の東日本大震災では今年3月現在、約3700人が災害関連死と

認定され、2016年の熊本地震でも200人を超えている。

 

水谷さんは、段ボールベッドの開発者であり、日本の避難所の環境改善に取り組む第一人者です。

「災害で傷ついた人が安らげる避難所」について、多くの被災地を訪れ支援してきた経験と近年の地震データをもとに、子どもたちと一緒に考えます。

2012年、水谷さんはイタリア北部地震の被災地を視察しました。そこでは、簡易ベッド、食事、トイレ、シャワーをはじめ、充実した医療支援も、災害から48時間以内に供給されていました。

設置されたテントにはカーペットが敷かれ、簡易ベッドが置かれています。ブランケットもあります。食事には、特設会場が設営され、手作りの温かい食べ物が提供されます。イタリアらしく、ワインもあるそうです。トイレとシャワールームも早期に完備されます。

日本はどうでしょう。避難所の体育館に敷かれるブルーシートは、人を守るためではなく、床を守るために敷かれ、供給される食べ物は、おにぎりやパン、カップラーメンなど加工品が中心です。

出して頂くだけでもありがたい、被災地の方は仰います。本当にそうなのか。水谷さんは海外でTKBの充実(Tトイレ・Kキッチン・Bベッド)を目の当たりにし、日本での普及に尽力されています。

講座では、お話のあと、全員で段ボールベッドを作ってみました。子どもでも簡単に組み立てられる設計になっています。

水谷さんら避難所・避難生活学会はNHKの取材を受け、NHK Web特集には海外と日本の避難所運営の現状比較が詳しく記されています。

NHK Web特集 命を守る「TKB」 避難所の“常識”が変わる?

NHK Web特集 命を守る「TKB」 避難所の“常識”が変わる? 2019年6月17日

“U-15世代が主役“の防災に込めた想い

大阪府北部地震、台風21号による被害を経験した昨年。近い将来、高い確率で発生すると言われている大地震や気象災害を含めると、私たちの周りには様々な災害リスクが存在します。

私たちは災害で子どもたちが大切な命を失わないよう、「幼少期からの防災教育」に取り組んでいます。今は大人に守られている子どもたちも5年後、10年後には立派な大人になります。自分だけでなく大切な人や家族がいるかもしれません。

いつ災害が起きてもベストの判断ができる「ホンモノの防災力=知識+判断力+行動力」を備えた大人になってほしい、そう願っています。子どもが主役になる社会が災害に強い社会になるよう、長い目で取り組んでいこうと考えています。

  ママコミュ!ドットコム      代表 出水 眞由美(防災士)

取材・文:梶原千歳 

イラスト:阿竹奈々子

 

【ジュニア防災キャプテン】全4回

1 子ども目線の防災

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